50代女性。院長先生 初めまして。 今日は娘のことでご相談があります。 娘は20代の大学生です。 婦人科に検査に行ったところ多嚢胞性卵巣症候群と診断され薬を服用しています。ただ病院では痩せた方がいいというだけで指導などはなく残念に思っていました。ジムやヨガに申し込んでも続かず休みになると彼女は海外にでることも多いのでこのままでは色々病気になっていくでしょうし、海外で働くことを希望しているので日本にいる間になんとか自分の身体について考え勉強する機会をと思い先生にご相談させていただきました。 彼女の祖母と叔母(40歳)は子宮癌で亡くなっており、わたし方の母は乳がん、父は糖尿病です。 わたし自身も5年前に大腸ガンポリープを切除、甲状腺右葉切除(ガンの疑いがあったため)と遺伝的に心配な要素もあります。彼女の体重増加とともにいびきもひどくなっています。 シングルマザーなので恥ずかしながら保険適用なども気になっております。どのように対応していけばよいのが教えていただきたいです。 よろすくお願いいたします。
ご相談ありがとうございます。肥満は、単なる体重の増加だけではなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを伴うことが多いため、医師が肥満を治療対象と判断した場合には保険適用となります。特にBMIが一定以上である場合や、肥満が原因で健康リスクが確認される場合、保険診療の対象となりますので、ご安心ください。娘さんの健康についてのご心配、よく理解できます。特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断を受けたうえで、体重管理が難しく、生理不順や家族のがんの既往歴があるということで、どのように対応すればよいか悩まれるのは当然かと思います。
過去に似たご相談もございましたので、こちらもぜひご参考になさってください:
肥満外来は保険適応?ダイエット外来の概要がご覧になれます https://yume-kanae.jp/problem/2711/
以下に一般的な多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の体重管理についてまとめます。
1. PCOSと体重管理について
PCOSはホルモンバランスの乱れにより、インスリン抵抗性や肥満傾向を伴いやすい疾患です。そのため、単に「痩せたほうがいい」と言われても、自己流のダイエットではなかなか効果が出にくく、続かないことが多いのが現実です。
ただし、少しの減量(5~10%程度の体重減)でも症状の改善が期待できます。具体的な対応としては:
特に、睡眠の質が悪いと食欲が増し、体重増加を助長してしまうため、いびきが強い場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査(簡易PSG検査など)を受けるのも一つの選択肢です。
2. 海外での生活を考えた健康管理
海外に行く機会が多いとのことで、日本にいる間に健康管理の基礎を身につけることが重要です。特に気をつけるべき点は以下の3つです。
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婦人科の定期検診の継続
→ 家族歴(子宮がん・乳がん)があるため、定期的な超音波検査・子宮頸がん検診・乳がん検診を推奨します。
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糖尿病の予防
→ 家族歴的に糖尿病リスクが高く、PCOSもインスリン抵抗性が関係するため、血糖値やHbA1cの定期的なチェックをおすすめします。
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食生活の習慣化
→ 海外では食生活が乱れがちなので、日本にいる間に正しい食事の習慣を身につけることが大切です。
3. 保険適用について
保険適用についてですが、PCOSによるホルモン治療(ピルやメトホルミンなど)は保険適用されます。また、睡眠時無呼吸症候群の検査も、疑いがあれば保険適用で検査・治療が可能です。
また、もし生活習慣病(糖尿病予備軍や高血圧)に該当する場合は、管理指導も保険適用で受けることが可能です。健康診断の数値が分かれば、それに応じた適切な医療機関の受診をおすすめできます。
4. 具体的に今からできること
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婦人科で定期検査を受ける
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睡眠時無呼吸症候群の簡易検査(PSG)を検討
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内科(糖尿病・代謝系)を受診し、インスリン抵抗性の有無を確認
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食事と運動の習慣を見直し、小さな成功体験を積み重ねる
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健康管理の意識を高めるサポート
特に「ダイエットを続けることが難しい」とのことなので、体重を減らすことを目標にするのではなく、「健康的な習慣を身につけること」をゴールにすると継続しやすくなります。
おわりに
肥満は見た目の問題だけでなく、将来の病気(糖尿病、高血圧、女性ホルモンの乱れなど)につながることがあります。でも、少しの体重の減少でも体はしっかり変わります。食事や生活リズムを整えるだけで、体調が良くなる方もたくさんいます。大事なのは「がんばりすぎないこと」と「ひとりで抱えないこと」です。医師と一緒に、無理のない方法で続けられる工夫をしていきましょう。
院長