40歳女性。2〜3ヶ月前から体が動かしにくくなり、飲み込みも悪くなって検査入院をした結果、多系統萎縮症(MSA)と診断されました。現在は排泄がうまくいかず、来月には膀胱瘻の手術を控えています。低血圧や、飲み込みにくさ、体が自由に動かせない感覚、呼吸の苦しさなど、次々と新しい症状が出てきており、CPAPを使っている状態です。急激に体が変化していくのがとても怖く、気持ちが追いつかずパニックになっています。多系統萎縮症という病気はどのように進行していくのか、そしてこれからどのように生活していけばいいのか、教えていただけませんか。
ご相談ありがとうございます。文面から、体の不調が急に次々と現れて、不安や恐怖でいっぱいの状況であることが伝わってきました。これまでの生活が一変し、戸惑いや焦りを感じるのは、ごく自然なことだと思います。
少しでも今の不安がやわらぎ、これからの見通しや向き合い方のヒントになるよう、できるだけわかりやすくお伝えしていきますね。
どんな病気?
「脊髄小脳変性症の多系統萎縮症(MSA)」は、脳のなかでも体の動きを調整する「小脳」や、自律神経、運動に関わる神経が徐々に働きにくくなっていく病気です。
この病気では、運動機能の障害だけでなく、自律神経の不調(血圧の変動や排尿障害など)、言葉が出しにくくなる、飲み込みが難しくなる、呼吸が不安定になるなど、さまざまな症状が同時に、あるいは段階的に現れてきます。出る症状の組み合わせや進行のスピードには個人差があります。
今の症状について
体が動かしにくい、飲み込みが難しい、排尿のコントロールがうまくいかない、血圧が下がりやすい、呼吸が苦しくCPAPを使用している――いずれも、この病気の過程で現れやすい症状です。どれも日常生活に大きく関わるため、不安や不便さを強く感じられるのは当然です。
これからどうなるの?
この病気は進行していく傾向がありますが、誰もが同じスピードで進むわけではありません。数ヶ月で変化を感じる方もいれば、ゆっくり変化していく方もいます。「この先どうなるのだろう」と不安になることはあっても、いまの症状に一つずつ対応しながら、安心して過ごせる時間をつくっていくことは可能です。
どのように過ごしていけばいい?
● 症状に応じた医療的サポート
飲み込みにくさには嚥下リハビリや食事内容の工夫、排尿の問題には膀胱瘻の管理、呼吸の問題にはCPAPや必要に応じて在宅酸素療法といった、個々の症状に合わせた対応があります。医療やリハビリのチームと連携しながら、日々の負担を少しでも軽くする方法を一緒に考えていくことができます。
● 気持ちのサポート
次々と変化する体に、心が追いつかなくなることもあると思います。不安やパニックが強いときには、心療内科や緩和ケアの専門医が、気持ちを整えるお手伝いをしてくれることもあります。お薬の力を借りることも、安心して過ごすための大切な選択肢のひとつです。
● 制度のサポート
使える制度はたくさんあります。障害者手帳、難病医療費助成、介護保険、訪問看護・福祉用具の利用など、生活を支える支援制度を早めに使っていくことが、心身の負担を減らす助けになります。病院の医療ソーシャルワーカーや地域の保健師さん、ケアマネジャーに相談してみてください。
最後に
病名を伝えられたとき、そして次々に体に変化が現れてきたとき、「このままどうなってしまうのか」と強い不安に襲われるのは当然です。でも、いま感じておられることすべてに、ちゃんと意味があり、支えになる道があります。
一人で抱えず、医療や介護、福祉の力を借りながら、「怖い未来」ではなく「安心できる今」を、一緒に作っていくことができます。
主治医と相談しながら生活の計画を立てることができますので、ご相談してみてください。
院長